佐藤純一ギターリサイタル
新しいステージへの第一歩-2-

――ギター文化館との関わりや、あそこで過ごした時間は、佐藤さんにとってどんな影響がありましたか？

佐藤：ギター文化館で約5年修行しました。
　その前は学習塾や高校教師をやっていて約8年くらいギターを全くやっていない期間がありました。ギター文化館で月に2回、週末に30分のミニコンサートをやることでステージ経験を積むことが出来たし、毎回何か違う曲を弾くことを自分の課題にして、ギターのための脳の活性化が出来たことが大きかったです。

――今年はシニアギターコンクールの運営から一歩引いたとお聞きしましたが？

佐藤：はい。木下代表に僕はずっとギター文化館にいるつもりがないことは、最初から伝えてありました。彼も僕がギター文化館に協力しながら修行をさせて欲しいと思ってることはわかっていたと思うんです。
　来る時が来たから、卒業したんです。

――新たなスタートを切ったということですね。そのプログラム選曲の意図をお聞かせください。
　今回のプログラムは、アンコールも含め、現在の佐藤純一集大成という風に聞かせてもらいました。いままでのＣＤをみても、ギターの王道をていねいに、歩いていますよね？

佐藤：僕のコンサートプログラムの考え方は単純です。
　（１）2回連続同じ内容のリサイタルはしない。（クラシックギター人口は少ないので、同じ人の同じプログラムでは客が来なくなってしまうから。）
　（２）自分のCDに入っている曲を入れる。（CD買ってほしいから。）
　（３）クラシック愛好家の好きな曲や知ってる曲を入れる。（幅広くたくさんの人に聞いてほしいから。）
ただこれだけです。
　それからコンサートが終わった時に、お客さんがどんなことでも良いから喜んで帰ってくれることをイメージして、そのために毎日練習することも重要な要素だと思います。

――なるほど。知ってる曲よく聞かれる曲を本当にていねいに演奏されていました。
　そして音がきれいでした。佐藤さんの弾き方は、そのまま生徒さんへの教え方ですか？佐藤先生はどんなことを教えておられるのか、ちょこっとだけでいいので、教えてください。

佐藤：ちょこっとだけね。
　『何をするにも肩に力が入っていては上手く行きません！』以上！！

――わかりました！　ところで、ギターとの相性は演奏の内容や質に影響しますか?

佐藤：楽器との相性や出会いは、自分の音楽にすべてがつながっていると思います。
　僕はお金もないのに、今までにたくさんの楽器を弾きました。KAWAIの量産、田村廣、ラミレス、サイモンマーティ、ポール・ジェイコブソン、フレタ、水原洋（ラコート・モデル）、今井勇一、パノルモ、ロマニリョス、田邊雅啓・・・。
　音楽に関して何もわかってない時代、ミーハーな時代、杉にこだわった時代、やっぱり松が良い時代、古楽器が好きな時代・・・。
　そして今は、ギターだけではなく音楽全体を意識した楽器で直線的な飾り気のない奏者の技量がモロに出るトーレス系の楽器の時代です。そして今考えているのは神様の霊力を借りることの出来る楽器です。もしこの考えがピタッとハマれば、僕の今後の人生のコマを大きく進めてくれる楽器になると思います。
　ハマればですよ。

（今回の公演終了後に、ギター製作家の田邊雅啓さんにお話を聞きました。）

田邊さんいわく「佐藤さんの使用したギターはトーレスをモデルです。現在の材料でトーレスの「鳴り」を出そうとしています。メープルを使用しています。
佐藤さんは本来、太く強い音を奏でます。その太い音が甘い音に鳴っていたでしょう？何度も話をして、佐藤さんの求める音を追求して行きました。」

　田邊さんの中でギターがリプロデュースされていく中で、佐藤さんの指向、音楽への思い、接し方、それにおそらく人間性や人生観までもが一本のギターに結晶させたもののように感じる。楽器との出会いというのは、おもしろいもの。しかも、作られていくその時間を共有した記憶まで、その楽器に込められているというのは、同時代に、そういう製作家がいるからこそ体験できるものだろう。佐藤純一と言うギタリストにはそうしたことを巻き込んでそれを力にしていくような魅力を感じる。それが音になって聴こえる。次の公演が楽しみだ！　公演、どんどんやってくださいね！！

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